<よく効く舵>

海岸沿いをジョギングしていた時のことです。海面に多くの流木が漂っているのを見かけました。風潮にのって、流されてきたのでしょう。防波堤に張り付きながらなすすべもなく上下運動を繰り返す流木を見て思いました。

「この流木はここへ来たくて来たんだろうか?」

私たちは皆、イキイキとした幸せな生活を目指して日々過ごしています。それはあたかも大航海時代にまだ見ぬ新天地を求め航海を続ける帆船のようです。

以下、物語風の話を記します。

幸せに満ちあふれた夢の国、“ハッピー・アイランド”を目指して、何ヵ月も航海を続けている帆船が2隻ありました。一体どこにその島があるのか誰もわからないのですが、A船長は、島は必ずあると信じ、方向を決め、マスト一杯に帆を張り航海をしていました。強い潮流や向い風でも、船を前に進めます。ときどき大きな流木や、岩礁にぶつかりそうになることもありますが、舵を切りながら、衝突を回避していきます。

グイグイと力強く進む船の舵はとてもよく効きました。

一方B船長は、何ヵ月も夢の国を発見できないので、不安になってきました。そこで帆を降ろし船の行き足を止めて考えることにしました。「本当に島はあるのか?もしなかったらどうしよう。」波に漂いながら、くる日も来る日も一人で悩んでいました。すると突然大きな波音が聞こえてきたので慌てて見渡すと、岩礁が目の前まで迫ってきていました。知らぬ間に潮に流されてしまったようです。慌てて舵を切りますが、停止して行き足の無い船の舵は全く効きません。やがてなすすべもなく岩礁に激突して沈んでしまいました。

一方、A船長は航海をつづけながら思います。「立止まらずに動いているので、色んな危機に遭遇する。しかし、その都度舵を切って回避している。まだ夢の国は見つからないけど、俺たちは航海そのものを楽しんでいる気がする。」

時間の流れに身をおく私たちは、遭遇する数々の困難を回避したり、近づいてくる幸運やチャンスをものにしたりするために、いつでも敏感な舵を切ることができるよう、たとえスピードは遅くとも、立止まらずに、力強く航海をし続けることが、とても大切な事のように思いました。