<欲>

動物は本能といわれる欲求を持っていますが、中でも最も基本的な欲求として、食欲・性欲・睡眠欲の三大欲求が有名です。私たちは人間である前に動物です。肉体を維持するためには必要な栄養を摂取してその栄養を身体の隅々まで行き渡らせなくてはなりません。生存欲求を満たす食事と睡眠が不可欠である所以です。

一方、種の保存欲求(性欲)は、自分の肉体ではなく、次の世代に自分の遺伝子を繋いでいきたいという欲求がベースになっています。

目の前の目的をかなえるためにある欲求が食欲と睡眠欲。未来の目的をかなえるためにある欲求が種の保存欲。こんな見方も出来ると思います。

アフリカの貧困国へ援助活動に訪れた人の体験を紹介するテレビ番組を観ました。痩せこけた子供を抱く痩せこけた母親にわずかな食べ物を差し出したところ、迷うことなく自分の口に運び入れ、子供には一切与えなかった親がいたそうです。一方、子供に食べさせて自分はほとんど口にしない母親もいたそうです。

また、次のような話も何かの記事で読んだことがあります。嵐で沈没した船の乗客が数少ない救命ボートを求めて他人を蹴散らす人もいる中、既にボートに乗船したにもかかわらず、自分の場所を後から来た若い女性に譲り自分は再び冷たい海を泳ぎ続けやがて海に沈んでいった人がいた。

このように人間は自分の生死を決める重要な場面でも、自分のことは二の次にして行動することもあるのです。

欲望を満たすためにのみ人は行動すると仮定した場合、その“欲望をいつ満足させたいのか“によって、人の行動は変わってくるとように思います。目の前の欲求、一年先の欲求、一〇年先、五〇年先、一〇〇年先…。

夜長の折、食欲が満たされたら、自分の寿命を超える未来を意識してみませんか。自分は滅んでも永遠に続く自分や家族そして仲間達の“遺伝子”が喜ぶような未来づくりに役立ちたいという“願い”ともいえる“未来志向型欲望”を感じられるかもしれません。他者を思いやる気持ちは、きっと時空を超え自分の遺伝子に返ってくるはずです。